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殺す

殺す_e0014175_1051889.jpg西澤保彦/幻冬舎文庫/686円/2011.10.13.読了

 初期の作品「猟死の果て」のタイトルを変えての刊行です。
 「猟死の果て」…訳が分からない話だった記憶があります。でも、再読。
 女子高生の絞殺死体が全裸で発見される。事件現場に赴いた刑事・去川が主人公です。若手刑事・光門とコンビを組むことになるが、以前から協調性がない彼のエキセントリックな行動に悩まされる。事件は連続殺人の様相を呈し、同じ高校、同じクラスの女子高生が次々と殺されていくが、犯人の動機…ターゲットの法則性がなかなか見いだせない。一方、光門は署内で同僚相手に暴行事件を起こし、逮捕されるが逃亡。刑事たちが殺される事件が並行して起こる…というわけで、死体がごろごろ出てきます。
 女子高生殺人の犯人にしろ、その事件の原因になった(犯人を追いつめた人物)にしろ、刑事・光門にしろ、その動機の異常さがこの本の読みどころです。とことん自己中心的で、「自分が満足できないのは、周りが悪いから。自分が満足できるように、お前がきちんとしろ」と怒りまくる心理をこれでもかと書き込んでいます。“きちんとする”というのは、この場合“抵抗せず従順に殺されろ”って意味です。
 こういう人物の気持ちを書くことにこだわっているのは、昔からなのですね。西澤保彦。

評価 良
by susitaro522 | 2011-10-13 22:39 | ミステリ
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