松田道雄/岩波文庫/1050円/2008.2.2.読了
「育児の百科」中巻は5ヶ月から1歳6ヶ月までです。この時期は離乳食(コンプレックス)との戦いと活動を増す赤ちゃんの事故を防ぐことが課題です。 この巻には名文「お誕生日ばんざい」があります。少し長いけど引用します。 お誕生日ばんざい お誕生日おめでとう。 1年間の育児で母親としておおくのことをまなばれたと思う。赤ちゃんも成長したけれど、両親も人間として成長したことを信じる。 1年をふりかえって、母親の心にもっともふかくきざみこまれたことは、この子にはこの子の個性があるということにちがいない。その個性を世界中でいちばんよく知っているのは、自分をおいてほかにはないという自信も生まれたと思う。その自信をいちばん大切にしてほしい。 人間は自分の人生を生きるのだ。いきいきと、楽しく生きるのだ。生命をくみたてる個々の特徴、たとえば小食、たとえばたんがたまりやすい、がどうあろうと、生命をいきいきと楽しく生かすことに支障がなければ、意に介することはない。小食をなおすために生きるな、たんをとるために生きるな。 小食であることが赤ちゃんの日々の楽しさをどれだけ妨げているか、少しぐらいせきがでていても、赤ちゃんは元気であそんでいるではないか。無理にきらいなごはんをやろうとして、赤ちゃんの遊びたいという意志を押さえつけないがいい。せきどめの注射に通って、満員の待合室に赤ちゃんの活動力を閉じ込めないがいい。 赤ちゃんの意志と活動力とは、もっと大きな全生命のために、ついやされるべきだ。赤ちゃんの楽しみは、常に全生命の活動のなかにある。赤ちゃんの意志は、もっと大きい目標に向かって、鼓舞されなければならぬ。 赤ちゃんとともに生きる母親が、その全生命をつねに新鮮に、つねに楽しく生きることが、赤ちゃんのまわりをつねに明るくする。近所の奥さんは遺伝子のちがう子を育てているのだ。長い間かけて自分流に成功しているのを初対面の医者に何がわかる。 「なんじはなんじの道をすすめ。人びとのしていうにまかせよ。」(ダンテ) 評価 優
by susitaro522
| 2008-02-02 10:31
| ノンフィクション
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