カテゴリ:ノンフィクション( 37 )

家族の勝手でしょ!

e0014175_2159344.jpg岩村暢子/新潮文庫/840円/2012.10.2.読了

 30~40代の主婦に1週間分の食事の写真を撮ってもらい、それと前後のインタビューを組み合わせて、日本の食卓事情を分析する「食ドライブ」。その最新刊です。
 私が一番最初に読んだ、この著者の本「普通の家族がいちばん怖い」。この本を読んだ人たちが、「あれからどうなりましたか?」と尋ねてくることが、本書となっています。つまり、継続してきた調査結果、後日談ってことですね。前著と比較し、写真がたくさん掲載されています。
 で、どうかっていうと「普通の家族がいちばん怖い」も十分怖かったですが、数年後の結果はさらに怖いことになっています。なにが怖いかって言うと…
 子どもが嫌がるものは一切食卓に出さない。子どももキライな食材が入っているだけで皿ごと拒否。
 ラーメンにも焼きそばにも具は入れない。理由は「そのものの味を楽しむため」?
 食器を洗わなくてすむよう最大限の努力をする。たとえば味噌汁の回し飲みとか。
 家族のメンバーはそれそれ異なる時間に異なるものを食べる。それが10才以下の子どもでも。離乳食のときからそういう状況。
 母親はテーブルの一角に菓子パンやスナック菓子などを置いておき、子どもはそこから好きなものを取っていく。なければ冷蔵庫を漁るかコンビニへ。親だけが食事らしい食事を取る時も。もちろんこれも10才以下。
 調査前のインタビューでは「手作りで」「野菜をたくさん」と述べる母親たち。調査後は「つかれることはしたくないので」と説明。その矛盾に気づかない。
 箸を使うことを躾けず、ずっとスプーンや躾箸のまま。箸の使い方や野菜嫌いは「幼稚園や学校でなんとかしてくれるはず…」。
 もう、ひーっ!ってカンジです。特に、皿に盛った菓子パンやスナック菓子をてんでに食べていくという現実。著者はこれを「餌場」と名付けています。社会的動物である人間が、社会性を徐々に失いつつあります。ううっ、日本は滅びるに違いありません。恐ろしすぎて読み返せない1冊です。

評価 優
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by susitaro522 | 2012-10-02 20:30 | ノンフィクション

星をつくった男

e0014175_1030098.jpg重松 清/講談社文庫/629円/2012.9.20.読了

 数年前のテレビドラマ「ヒットメーカー・阿久悠物語」。よかったですね。なつかしい歌謡曲の数々、昭和40~50年代の勢いのあった芸能&テレビ業界、そして、阿久悠という稀有な才能が描かれており、ビデオに録って何度も観ました。
 ドラマを見た直後に阿久悠の本を読みましたが、今回は小説家・重松清が阿久悠について書いた本。たぶんこれがドラマの原作と言うか、下敷きになったんじゃないかと思います。
 それにしてもやっぱり阿久悠はすごい。作詞した量も質もバリエーションも。そして、時代を切り取るという姿勢も。
 ドラマでは田辺誠一が演じてました。ドラマとしては申し分ないけど、この本を読んだらイメージと違うかな。それと、ドラマで都倉俊一を演じた内田朝陽にヤラレマシタ。かっこいー!
 今、ウィキを読んだら、映像の権利関係でドラマのDVD化も再放送も困難と書かれてました。デッキが壊れたからビデオテープ捨てちゃいました。残念無念(涙)。

評価 良
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by susitaro522 | 2012-09-20 05:59 | ノンフィクション

驚きの介護民俗学

e0014175_13402295.jpg六車由美/医学書院/2000円/2012.4.27.読了

 医学書院「ケアをひらく」シリーズ。最新刊です。
 今回は民俗学で大学の准教授から高齢者施設の介護士に転向、という好奇心をそそる経歴の方が著者です。
 彼女が老人ホームで出会った老人たちの話。手が届くほど近い過去なのに、失われつつある昭和の庶民の生活がそこには埋もれています。という、民俗学的な興味をそそられる話と老人たちの話を聞くことが、援助になるというケアとしての話の2つの側面から読むことができます。特に、認知症に効果があると思われている『回想法』と著者が行っている「聞き取り」の相違について書かれた章が興味深かったです。治療とか援助とか介護って、ある意味窮屈なものであることを痛感しました。でも、枠をはめないと、普及はしないというジレンマ?
 それと、「驚き続けることの困難さ」が私自身の実体験とリンクして読むことができました。いつも生き生きとした関心を持ち続けることは難しいし、生き生きとした関心を持つことが非能率と結びつくことがありますよね。
 「逝かない身体」「リハビリの夜」「驚きの介護民俗学」の3冊のいずれにも、あとがきに「シリーズ ケアをひらく」の編集者・白石さんのことが書かれています。この白石さんにお会いしたことがあります。穏やかな物腰で、しかも子どものような好奇心を持った知的な方でした。

評価 良
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by susitaro522 | 2012-04-27 09:38 | ノンフィクション

リハビリの夜

e0014175_8373097.jpg熊谷晋一郎/医学書院/2100円/2012.3.13.読了

 「逝かない身体」に続き、医学書院「ケアをひらく」シリーズです。
 今回は脳性マヒを持っている方が著書です。
 幼少時から定期的にリハビリの合宿に行く体験が描かれており、これがとってもおもしろかったです。トレーナーには「こうあるべき」という正しい動きがあり、その型にムリヤリ従わされる。その中で性的な感覚が呼び覚まされる…と言うのがリハビリの構図という読み解き方がたまらないです。えっ、コレってSM?と感じていたら、本当にSMの解説が出てきました(笑)。
 1つの事象(リハビリテーション)を生理学的視点、歴史的視点、そして官能的・感覚的視点から語りつくしていて、著者の並々ならぬ知性を感じました。頭の良い人はどんな境遇でもその力を発揮し、受け手の心と知性を揺さぶるものですね。
 
評価 優
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by susitaro522 | 2012-03-13 17:54 | ノンフィクション

逝かない身体

e0014175_8384743.jpg川口有美子/医学書院/2100円/2012.3.9.読了

 久しぶりに別カテゴリの本を。
 医学書院という出版社から出ている「シリーズ ケアをひらく」は、専門外の人でも分かりやすく、興味が持てるシリーズです。
 「逝かない身体―ALS的日常を生きる」は、ALSの母親を介護した日々をつづるとともに、ALSの人たちの社会的な活動に参加した体験を描いた1冊です。ALSとは筋委縮性側索硬化症のことで、徐々に全身の筋肉が委縮していき、それに伴って運動障害が生じ、発語も目を開けることもできなくなります。最後は呼吸菌がマヒして死に至るという難病です。
 動けなくなり、言葉を発することも視線でメッセージを送ることもできなくなっていくにつれて、母親の身体そのものに意識を向けるようになり、身体そのものからのメッセージを受け取るようになる…と言うのが本書のタイトルであり、眼目だと思います。
 でも、私が関心を持ったのは著者の人生。優秀な大学を出て、エリートの夫と結婚して、イギリスに海外赴任。子どももイギリスの学校に通わせ始めたところ、母親の発症のため、日本に帰国。介護に専念することになる。その経験を書きつづり、大学院に進学。本の冒頭は「なんかエリートっぽい匂いがプンプンする」って、印象でした。そういう読み方は邪道でしょうか?

評価 良
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by susitaro522 | 2012-03-09 10:47 | ノンフィクション

ボクには世界がこう見えていた 統合失調症闘病記

e0014175_20301273.jpg小林和彦/新潮文庫/590円/2012.1.5.読了

 たまにはノンフィクションを。
 統合失調症の患者が自らの発症したときやその後の人生を語った貴重な本です。こういう本はいくつかあるのですが、いわゆる病的体験をクリアに描いているところが貴重…と書いてありました。
 病気のことを書いてあるところも興味深いですが、この人の職業がアニメーション関係だったので、そちらもおもしろかったです。「タッチ」をあんまり評価していないところが、なるほどってカンジでした。
 他の人から見て「ありえない」と感じることを確信する…というところがたびたび出てきます。客観的にみると、精神症状としか思えないですが、「コレとアレは関係ある」とか「あの人のアノ発言はこういう意味に違いない。あてこすりだ」なんて、私はしょっちゅう確信します(笑)。
 それにしても、自費出版で出した本がいきなり新潮文庫になってしまうなんてすごいです。

評価 良
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by susitaro522 | 2012-01-05 23:55 | ノンフィクション

「親の顔が見てみたい!」調査

e0014175_1032202.jpg岩村暢子/中公文庫/914円/2010.9.19.読了
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by susitaro522 | 2010-09-19 11:43 | ノンフィクション

図書館ねこデューイ

e0014175_1362652.jpgヴィッキー・マイロン/早川文庫/760円/2010.6.28.読了

 アメリカの片田舎の町立図書館に本当にいた猫の話です。
 凍えるような冬の朝、図書館の返却ボックスを開けようとした図書館長のヴィッキーは、ボックスの中にいきものが動いているような奇妙な物音がすることに気付いた。その正体は死にかけている1匹の子猫。図書館で飼うことになり、デューイ・リードモア・ブックスと名付けられたその雄のトラ猫は人懐こくて賢く、そしてハンサム。図書館を訪れた人々を癒すデューイは「図書館猫」として有名になり、全米から人々が訪れるのだった…。
 翻訳のせいか、それとも著者のせいか…文章が読みづらかったです。デューイの愛らしい行動や人々との心温まる交流はもちろんのこと、この本で印象的だったのは、寂れた町の活性化にデューイが一役買っていたこと、世界中のメディアがデューイをとりあげ、わざわざ東京からテレビクルーが来て細かい注文をして一日中撮影をしたが、使われたのは数秒だったこと、老齢になって外観が衰えたデューイを図書館から追い出そうとする動きがあったこと、にページを割いていることです。しかし、一番印象的なのは、巻頭の数ページに掲載されたデューイの写真です。…かわいい。こんな猫がいる図書館があったら、通い詰めますよ。

評価 良
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by susitaro522 | 2010-06-29 22:45 | ノンフィクション

モンスターマザー

e0014175_9213912.jpg石川結貴/光文社知恵の森文庫/590円/2010.4.1.読了

 すっかり広まった感のある「モンスター・ペアレント」という言葉。最近の親はすごいことになっているらしい、教育現場は大変らしいと、怖いもの見たさ・やじうま根性で読みました。裏表紙のあらすじだけでも「運動会でピザの出前を取る」「うちでもやらせないから学校でも掃除をさせないでほしいと要望する」「受験に失敗したのは学校のせいと、担任を土下座させる」など、ものすごいです。
 のべ3000人に取材した本ということです。身勝手で自己愛的な人間の話を聞くだけで、吐き気がしてくる私としてはまったく御苦労さまとしか言いようがないですね。現代日本の食卓事情を分析した岩村暢子の「変わる家族 変わる食卓」と合わせて読むことをお勧めします。

評価 良
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by susitaro522 | 2010-04-01 20:16 | ノンフィクション

普通の家族がいちばん怖い

e0014175_23324.jpg岩村暢子/新潮文庫/438円/2010.3.29.読了

 「変わる家族 変わる食卓」に続いて、岩村暢子の本を読んでみました。「変わる家族 変わる食卓」は日常の食についての調査でしたが、今回は正月とクリスマスというイベントの食事に関する調査です。今の日本の家族と食事そして母親の実態が描かれていて、怖いのなんの…下手なホラーより怖いです。
 冒頭はサンタクロース。夜中にサンタがプレゼントを置いてくれることを、子どもが信じることを願い、信じさせる努力を続けることが描かれます。しかし、その子どもとは10代後半!20歳近くなってサンタを信じている子ども(?)なんているのでしょうか。「サンタを信じないような夢のない子どもにはなってほしくない」という母親の発言はうすら寒いです。
 出てくるエピソードはどれも怖く、ここに出てくる母親の心理は理解不能です。おせち料理は作らない。しかし、“体感”はさせたいので“飾る”。クリスマスの飾りつけには燃えるけれど、料理はケンタのチキンを箱ごと出す。う~ん、ホラーです。

評価 良
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by susitaro522 | 2010-03-29 14:14 | ノンフィクション