ぶたぶた図書館

矢崎存美/光文社文庫/495円/2012.12.24.読了

 大人気!「ぶたぶたシリーズ」。今回は図書館が舞台です。
 本が大好きな中学生・雪音。周りから本が好きなことが理解されず、溶け込むために小さいころから苦心してきた。地元の市立図書館の司書・寿美子と仲良くなり、図書館のイベントにアイディアを出すが、落選。雪音のアイディア「ぬいぐるみおとまり会」が落選した理由は、独自性がないからでも、実現が難しいから、でもなく、ポスターのモデルとなるぬいぐるみの魅力!だった…。
 というわけで、ぶたぶたさんの登場です。今回はなかなか出てきませんでした。「ぬいぐるみおとまり会」って初めて知りましたが、外国で始まったらしいですね。子どものだいじにしているぬいぐるみが図書館で一晩過ごして、彼(彼女)が本を読んで過ごした一晩の様子を写真に撮る…というイベントでしょうか?ぬいぐるみが本を読んでいるポーズをつけるのはむずかしそうですが、ぶたぶたさんならまったく問題なく、しかもモデルとして100点満点です!
 本好きな子どもって苦労しますよね。他人は「勉強になっていいじゃない」というけれど、そんな程度は超えた本好きな子どもでした…わたしも。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-12-24 01:37

ペンギン・ハイウェイ

森見登美彦/角川文庫/629円/2012.12.22.読了
[PR]
# by susitaro522 | 2012-12-22 10:03

塔の断章

乾くるみ/講談社文庫/552円/2012.12.12.読了

 乾くるみの初期の作品でした。
 出版社で、ゲームや音楽とのコラボの企画で、自分の小説がゲームがされることになったヒロイン。出版社の社長の別荘にその企画のメンバーたち8人が集まったが、その夜、社長の妹が墜落して亡くなった。事故死とされていた彼女の死だが、社長はヒロインたちに真相を探るよう依頼する。
 初期の作品でも、仕掛けはきっちりしていました。でも、ミステリ部分より、作中に登場する小説を読みたくなったのは秘密です(笑)。

評価 可
[PR]
# by susitaro522 | 2012-12-12 08:01 | ミステリ

青銅の悲劇 下

笠井 潔/講談社文庫/790円/2012.12.9.読了

 なんとか下巻に到達。
 むー。ちっとも読み進められません。
 旧家での連続殺人事件、初めは家長(祖父)が毒飲んで、でも死なず。次に長男が撲殺されます。これらの筋書きを書いた小説の概要が発見され、書いたのはだれか、そしていつか。また写しを作ったのがだれか…またまた長々と推理が繰り広げられます。上巻でさんざんやったお酒に毒を入れたのはだれか、そもそも宴席でのお酒に毒が入っていたのか…も下巻で再度長々と論議されます。論理的な謎をメモとか使って解き明かすタイプの読者には大変向いていると思います。
 昭和天皇の死…1960~70年代に青春を過ごし、学生運動にかかわった人々にとっては、天皇は打ち倒すべき権威の象徴であり、いいかえれば父権の体現としての存在だったということもこの本の大きなテーマなのでしょう。たぶん。
 でも、残念ながらわたしはついていけなくて読むのが辛かった…。

評価 可
[PR]
# by susitaro522 | 2012-12-09 23:33 | ミステリ

青銅の悲劇 上

笠井 潔/講談社文庫/886円/2012.11.30.読了

 「矢吹駆シリーズ」!です…?読んだことあるような、ないような…分からないけれど、読み始めました。
 東京郊外の頼拓市の旧家を舞台に繰り広げられる連続殺人事件。かの家に招かれた小説家・宗像冬樹が主人公です。
 えっと、昭和の終わりっていうか、昭和天皇の病気が末期で…という時代自体がこの本の大きな要素で、かつて学生運動をしたことがある主人公の思い入れが延々と語られます。事件のほうは、宴会の席で、お酒にトリカブトの毒が入れられているというもの。いつ、だれにチャンスがあったかを、何人もの登場人物が、これも延々語り合います。その登場人物の一人のナディア・モガールのことを作中で“フランス娘”と表現しているのが何とも違和感を感じさせます。フランス娘って…。

評価 可
[PR]
# by susitaro522 | 2012-11-30 01:47 | ミステリ

パパママムスメの10日間

五十嵐貴久/幻冬舎文庫/762円/2012.11.1.読了

 会社員の父親と高校生の娘。微妙な関係の2人の人格が入れ替わってしまった!というドタバタの数日を描いた「パパとムスメの7日間」の続編。今回は母親の入れた3人家族が入れ替わってしまいます!
 パパは母親の身体に、ママは娘の身体に、そしてムスメは父親の身体に…。そこに、父親の会社での問題が絡みます。この問題を親子三人で解決できるのか?そして、元の身体に戻ることができるのか?そもそも入れ替わりのきっかけはなんだったのか?が読みどころ?
 ムスメは前回も父親になっているので、ある意味慣れていますが、専業主婦の母親になってしまった父親は家事がまったくできません。「一人暮らしをしていたからだいじょうぶ」なんて甘く見ていましたが、大間違い。それにしても、全自動の洗濯機がろくに扱えないなんて信じられません。
 ドタバタを通して、家族のきずなを取り戻す…というのが、テーマでしょうが、それよりもやっぱり入れ替わった父親のダメぶりがおもしろかったです。結局、父親は家事よりも自分の仕事のトラブル解決に奔走している描写が多くて、そこは物足りなかったです。でも、大学生になったばかりの娘になった母親のはじけっぷりは楽しかったです。母親はバブル世代。女子大生ブーム&ディスコでノリノリの体験がよみがえりましたね~。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-11-01 12:31

平等ゲーム

e0014175_1355919.jpg桂 望実/幻冬舎文庫/724円/2012.10.30.読了

 瀬戸内の小さな島に、人口1600人・島民はすべて平等というコミュニティがある。という設定で、この島出身の青年が主人公の小説です。この島は、空きができたときに、希望者を審査して島民に迎えるというシステムで、主人公はその担当(仕事も数年おきに“平等に”くじ引きで変わります)。
 生粋の“平等”価値観で培養された人物が、違う価値観に触れて戸惑ったり新しい感情が芽生えたりするところや、“平等”と信じていた島の中にも取引があることを知り衝撃を受けるところ、など、主人公の感情が丁寧に描かれています。
 この本を読んで連想したのは「ゆとり教育」。「ゆとり」でなくても、子どもに優劣をつけるのは望ましくないという風潮が蔓延していますが、その行きつくところはどうなるのか・…という思考実験的な小説として読みました。そういう世界って初めは理想に感じるけれど、やっぱり競争はあったほうがよいと思います。って、作者の意図にまんまとはまっていますね(笑)。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-30 11:00

COMEING OUT

e0014175_18203050.jpg高殿 円/徳間文庫/590円/2012.10.29.読了

 「トッカン」を読んで。「カーリー」を読んで。そしたら、本屋でコレを見つけました。去年出版された文庫です。
 「カミングアウト」というタイトル通り、周囲に知られないよう隠してきた秘密をカミングアウトする話。連作短編集っぽいカンジの構成です。
 “コインロッカー・クローゼット”…女子高生のヒロインは自分のことがだいきらい。自分でないいろんな州所に変身するために、コインロッカーに衣装を隠している。それぞれのコスチュームにふさわしい人格を演じながら、援助交際を続けていたが…。
 “オフィス街の中心で、不条理を叫ぶ”…会社では“デキル女”ファッションのヒロイン。しかしその正体は年季の入ったロリ服好き。年齢的にそろそろ卒業する時期か?ロリータに理解のある男性と結婚して、続けることができるか。悩みは尽きない。
 “恋人と奥さんとお母さんの三段活用”…夫のため、家族のため、完璧に家庭を守ってきたヒロイン。しかし、一大決心して、夫に「抱いてください」といったものの無視される。ネットの世界で、気持ちを理解してくれる男性とめぐり合い、会うことにするのだが…。
 “骨が水になるとき”…46才・独身の井原臣司。将来を考え、墓を買うことにしたのだか、そこでひとりの女子高生・リンゴと出会い、不思議な関係が始まる。
 “老婆は身ひとつで逃亡する”…横暴な夫。夫が定年退職したら、離婚する!と決意してるヒロイン。その日を夢見て、せっせと準備する毎日だが…。
 主人公が次々とかわっていく短編を読むうちに、それぞれの登場人物が重複し、物語がリンクしていることに気付きます。そして、物語はラストの“カミングアウト”“エピローグ”で、結実します!
 高殿円はまだ読み始めたばかりですが、1冊ごとにテーマも登場人物も趣向も違います。引き出しの多い作者さんですね。「COMEING OUT」は、年代も境遇も価値観もバラバラな登場人物たちの心理描写が巧みで、そのどれも共感できたし、物語どうしがリンクしていく手法がみごとでした。おススメの1冊です!

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-29 21:52

衆愚の果て

e0014175_1334669.jpg高嶋哲夫/幻冬舎文庫/648円/2012.10.29.読了

 高嶋哲也といえば、「M8」「TSNSMI」「東京大洪水」の災害三部作と「首都感染」が好き♪これらにも、政治家が登場し、自然科学と政治あるいは災害と政治のかかわりが書かれていますが、この本は政治家が主人公。まるごと政治がテーマです。
 フリーターの青年・大場が、とある政党の募集に応じて衆議院選に出馬。比例で当選し、国会議員となる。なにも知らず、なじめない慣習の中、政治に無関心だった主人公が徐々に目覚め始める…。
 この本を書いたヒントって、明らかに数年前に議員になったあの人ですよね。高嶋哲也って、けっこう時事ネタから本を書くことがあるんだって、発見しました。
 政治家が優遇されていること、そして、一年生議員にはなにもできないこと、など、選挙権を持っているものとして知っておかなければならないのに、知らない政治の基礎知識が分かりやすくストーリーに溶け込んでいます。う~ん、でも、ストーリーとしては「こんなことあるわけない」ってカンジでした。外国人看護師の問題については、私は主人公とは反対意見。状況が変わればまた法律を変えればいいなんて安易だと思います。
 結論。やっぱり高嶋哲也は自然科学系が好きです。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-29 10:53

世界でたったひとりの子

アレックス・シアラー/竹書房文庫/705円/2012.10.28.読了

 珍しく海外文学。
 高齢化そして老化を防ぐ技術が進歩した世界。引き換えに出生率が激減し、子どもの存在がなによりもまして貴重になっている。子どもはさらわれないように家の中に隠され、また、子どもを持つ体験がしたい人々のために貸し出される。子どものままにとどめる技術も開発され、実年齢と隔たりのある子どもたちのショーが行われている…そんな世界を克明に描いています。
 主人公の少年・タリンは血のつながりのない男に連れられて、街々を流れ歩き、子どものない夫婦に時間で貸し出される日々。“お客”が望む“子どもらしさ”を演じています。
 作家のアレックス・シアラーはイギリス人。イギリスって、こういう虚構の話を書くのがうまい人が多いですね。「私を離さないで」とか「1984」とか「時計仕掛けのオレンジ」とか?
 連れられている男に、何度も子どものままでいるように手術を勧められても、成長することを望む主人公・タリンと、子どもを望むことを切望する人々の思いが切なく伝わってくる良書です。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-28 20:28

オーディンの鴉

e0014175_1343132.jpg福田和代/朝日文庫/800円/2012.10.27.読了

 東京地検特捜部の検事が主人公。将来を有望視されている若手国会議員の自殺事件を追っていた主人公は、その議員のプライバシーのすべてが暴かれ、インターネットにさらされていたことを探りあてる。さらに、主人公自身にも、その魔の手が近づいて…。
 幼稚な言い方しかできないですが、パソコン、インターネットが発達した現在。個人の生活のすべてを把握し、それを全世界に発信することが可能…という、恐ろしい世の中になっています。ネットやカードで買い物をすれば、その人がどんなものを好み必要としているか分かってしまうし、交通機関や宿泊もカードで生産すればどこに行ったかもわかってしまう。また、そこここに設置されたカメラの画像からどこにいて何をしたかわかってしまう。そして、いったんネットにさらされたら、もう取り返すことができない…怖いです。便利だけど、ひとりの人間の人生を狂わせ、死に追いやってしまう現代社会の陥穽を克明に描いた1冊でした。
 自分のことで想像してみても、どんな本を読んでいるかとか、そもそも本にどのくらいの金額をつぎ込んでいるか…がこのブログからもわかるわけで。そんなこと大した情報ではないけれど、それがあたかも意味のある情報のように取り扱われたら…と思っただけで、ぞーっとしました。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-27 22:00

ご依頼は真昼のバーへ

e0014175_1352913.jpg加藤実秋/角川文庫/590円/2012.10.26.読了

 東京・神楽坂を舞台に、地元出身の若者が自らが生きる道を模索しつつ、日常の謎を解く…という一石二鳥のミステリ?タイトルにあるように昼間営業しているんだけど、バーという不思議な店が登場します。
  …なんとなく、乗りきれませんでした。主人公とその友人のキャラが凡庸?特徴のある設定のはずの真昼のバーも、特に効果が感じられない?
 加藤実秋の代表作といえば「インディゴの夜シリーズ」ですよね。インディゴのホストクラブのメンバーは
活気あふれるメンズですが、この本に登場するバーの店員も店主もやる気はなさ気だし、正体不明だし、同じような夜の香りがする店ですが、好対照です。

評価 可
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-26 20:42

タイムカプセル

e0014175_140456.jpg折原 一/講談社文庫/676円/2012.10.25.読了

 中学卒業記念で校庭に埋めたタイムカプセル…10年の時を経て、メンバーたちに届く謎の招待状。駆け出しライターの主人公(タイムカプセルを埋めたメンバーの一人)が、記事を書くために一人一人を訪問していく。同級生たちの10年後の動向と過去の人間関係、そして、ストーカーのようにつきまとい不吉な招待状を配って歩く人物の正体、がこの本の読みどころ?
 「一、二、惨、死、死屍累々」などの言葉遊びやラストが袋とじになっているところ、引きこもりの人物を訪ねるという場面で扉のイラストが書かれたページを開ける…などなど、遊び心にあふれた1冊。っていうか、子どもだまし?と思ったら、もともとはジュブナイルのシリーズだったそうです。そう考えれば、解説にあるように子どもたちに「ミステリっておもしろい!」「こんなこともできるんだ」って分かってもらえてよいかもしれませんね。
 個人的には、不気味な招待状なのに、末尾が「お粗末さまでした」で結んであるのが、奇妙におもしろかったです。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-25 23:50 | ミステリ

思い出のとき修理します

e0014175_140109.jpg谷 瑞恵/集英社文庫/600円/2012.10.25.読了

 書店に行くと、「ビブリア古書店」と先日読んだ「珈琲店」とこの本が平台に並べてあります。柳の下に何匹ドジョウがいるのか…。
 美容師として順調に歩んできたヒロインだったが、それが付き合っていた男の力でしかないことに気付き、仕事を辞めて寂れた商店街の美容院の跡に越してきた。近所に「思い出の時修理します」という謎の看板が掛かった店があり、そこに住んでいる物静かな青年と知り合いに…。
 知り合いになったのはもうひとり。「賽銭をあげろ」といつも言う神社の息子。この3人が軸になり、眠ったようなしかし濃密な付き合いの商店街を舞台に心温まるエピソードが綴られる…といったカンジの話でしょうか。ヒロインの近い過去(美容師としての挫折)と遠い過去(母親との葛藤と祖父母の思い出)も絡み、奥行きのある話になっています。う~ん、癒し系?先日の「珈琲店」の話より、こちらのほうが好みでした。
 話の核になる、時計屋の青年はなかなか好青年。表紙のイラストはちょっと鼻が長すぎ?

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-25 00:47

午前零時のサンドリヨン

e0014175_1402576.jpg相沢沙呼/創元推理文庫/760円/2012.10.23.読了

 聞いたことも、読んだこともない作者のミステリです。「鮎川哲也賞受賞作」だそうですが、創元推理文庫には最近ナンパなミステリも混ざっているので、用心しながら、期待しないように、読みました。
 高校生の男の子・須川くんが一目ぼれしたクラスメートの酉野初。美少女だけど、ぶっきらぼうな彼女のかくれた特技はマジックだった…。
 なんとかして彼女の心を開かせ接近しようとする主人公・須川くん。マジックには真摯に取り組みながら、人と関わることに憶病になっている酉野。ふたりが接近できるのは、謎を解き明かす時だけ…という青春ミステリです。謎といっても、もちろん日常の謎ですけど。
 酉野の描き方は、自意識に雁字搦めになってしまう青春時代の苦しさが伝わってくるようです。なんとなく、米澤穂信のミステリの登場人物を連想しましたが、もっと初々しいカンジ。酉野の友人の態度の理由のない豹変ぶり(憎むと言っていいほど嫌っていたのに、突然普通に接してきた!)には納得いきませんが、全体において読後感のよいミステリで、登場人物たちのその後が気になります。
 マジックのうんちくも読めるし、お得な1冊。続きがあるようなので、読みたいです♪

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-23 23:22 | ミステリ

珈琲屋の人々

e0014175_12523949.jpg池永 陽/双葉文庫/619円/2012.10.22.読了

 おいしい珈琲大好きです。というわけで読んでみました。
 殺人の前科を持つ男性がやっいている喫茶店(珈琲屋)を舞台に、人々の触れ合いを描いた1冊。人生に行き詰った人、決断を迫られた人が登場する連作短編集のような体裁です。どの人も、この主人公が人を殺したことがあるということを知り、そこに何らかの期待をして、この店を訪れます。「この手で殺したのか…」というフレーズ使いすぎ…という感想だけが残ってしまいました。重苦しい人間ドラマってカンジで、残念ながら好のみではありません。

評価 可
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-22 23:28

ニサッタ、ニサッタ 下

e0014175_1252967.jpg乃南アサ/講談社文庫/600円/2012.10.22.読了

 新聞配達の仕事で借金を返せた主人公。しばらくは腰を落ち着けてお金を貯めようと考えていた最中、住み込み仲間のトラブルをきっかけに故郷に帰ることにします。そういうわけで、上巻は東京、下巻は主人公の故郷の北海道・斜里が舞台になります。
 故郷でスーパーの仕事を見つけ、まじめに働きだした主人公。そこへ、住み込みで働いていたときの知り合いの少女が転がり込んできて…。
 この少女と主人公の関わりが下巻の中心。自分だけが運が悪い、恵まれない。人生をやり直したいと思っている主人公がこの少女の人生に触れることで成長していきます。とっても深い話でした。それにしてもこの主人公。故郷の町でもまた失敗します。だれでもやっている、このくらいはだいじょうぶだろうなんて、現実認識が甘いとしか言いようがありません。
 登場人物の中で印象的だったのは、主人公の祖母。なんだかいつも眠ってばかりいるようで、でも、含蓄のあるセリフを言うのです。老賢者ってカンジですねぇ。…と思ったら、この祖母を主人公にした話もあるようです。やっぱり、作者にとっても魅力のある人物なのですね。
 タイトルの「ニサッタ」は沖縄の言葉で「明日」という意味だそうです。どんなに今日が辛くても「明日がある」ということでしょうか。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-22 11:57

ニサッタ、ニサッタ 上

e0014175_12513466.jpg乃南アサ/講談社文庫/600円/2012.10.22.読了

 タイトルからして謎な乃南アサの新刊。
 主人公が出社してみると、いきなり会社が倒産していた…というシーンが物語は始まります。大学を卒業して、1つ目の会社は「合わない」という理由で退職。就活してやっと見つけた2つ目の職場が冒頭のシーン。それから、職を探す日々。派遣された仕事もインフルエンザでフイにしてしまい、アパートも追い出され、ウィークリーマンションを泊まり歩き、その日をしのぐ仕事を続ける…。運が悪い、周りが認めないと言い続ける主人公ですが、それだけではないような絶妙な描き方です。
 パチンコで儲けた大金も女性にデレデレしているうちに持ち逃げされ、消費者金融に手を出し返せなくなり、行きついたところは住み込みの新聞配達員。一時落ち始めるとキリがないです。しかし、どっちかというと小心者である意味誠実なので、犯罪に手を出したり借金を踏み倒したりしないところも絶妙ですね。
 以前にも、若い男性でどんどん落ちていくさまを描いた乃南アサ。前回は知性のなさが主人公の表現のつたなさや感情のバラエティの少なさで伝わってきました。今回の主人公は一応大学卒。その違いがきちんと描かれていたのが、すごく印象的でした。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-22 00:23

エール! 1

e0014175_12505513.jpg大崎 梢 ほか/実業之日本社文庫/600円/2012.10.21.読了

 働く女性を主人公にしたアンソロジー。
 “ウェイク・アップ”(大崎梢)…主人公は漫画家。少女マンガを書いている主人公が仕事が来なくなり…種族している雑誌からの脱皮を描いています。
 六畳ひと間のLA“(平山瑞穂)…通信講座講師。英検の通信講座を担当している主人公。とんちんかんでしつこいメールをよこす受講生に辟易しています。
 ”金冠日食を見よう“(青井夏海)…地方都市のプラネタリウムの解説員。金冠日食という歴史的なイベントで、仕事の存続を図ろうとします。
 イッツ・ア・スモール・ワールド”(小野幸也)…主人公はディスプレイデザイナー。過去にはデパートのディスプレイも手掛けたことがあるのだが、現在の仕事は小さな和菓子屋…。
 “わずか四分間の輝き”(碧野圭)…フィギュアスケートの記事を書くことを仕事にしている主人公。大手の雑誌から、選手の私生活を書くように言われます。
 “終わった恋とジェット・ラグ”(近藤史恵)…ツアー・コンダクター。ヨーロッパのツアーに、元彼が新婚旅行で!
 決して順風満帆ではなく、挫折や矛盾を抱えながら、それでも誠実に仕事を続けようとする女性たち。解説にもありましたが、女性ならではというより、その個人として仕事を続けることの葛藤を丁寧に描いた作品が収録されていて、読んでよかったと思える本でした。買いですよ!買い!「1」ということは、シリーズとして続くということなので、「2」も絶対読みます!

評価 優
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-21 12:27

シューマンの指

e0014175_12502121.jpg奥泉 光/講談社文庫/648円/2012.10.21.読了

 時々読んでみるもののなんだか難しげな奥泉光。あらすじを読むと、ミステリみたいだけど理解できるでしょうか…。
 ヨーロッパに滞在している友人から届いた便りには、高校生の時の友人がピアニストとして活躍しているという情報が記されていた。しかし、彼は指を切断してピアノは断念したはず…という謎めいた始まりです。
 そして、
主人公とその友人が高校生のときの追憶が綴られます。稀有な才能を持った友人。音大を目指す凡人の自分、そして、現実的な能力はあるが俗物のもうひとりの友人。この3人が織りなす微妙な関係を縦軸に、心に浮かぶ音楽が真実で現実に奏でるとそれはレプリカになってしまう…という独特な価値観が絡みます。う~ん、イデア論ですねぇ。
 思春期に、そして芸術家にありがちな観念論が長々とあり、けっこう読み応えがありました。加えて、ミステリ部分もばっちりです。ラストは驚愕!ってカンジで、緻密に組み立てられたミステリです。むずかしいけれど、なんとかついていけましたよ。
 しかし、この本で、一番印象的だったのはカバーのイラスト。鍵盤を模した表紙そしてオビに血まみれの指紋が!!と思ったら、オビを取ってもやっぱり血の指紋が!かっこいーです。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-21 01:33 | ミステリ

カーリー Ⅰ

e0014175_1249626.jpg高殿 円/講談社文庫/600円/2012.10.19.読了

 「トッカン」がドラマ化された高殿円のライトノベルが復刊。「トッカン」と「復刊」で韻を踏んでます(笑)。
 …じゃなくて、「トッカン」は、税務署員を主人公にした成人向けの話でしたが、もともとはライトノベルの分野で、ヒットをいくつも飛ばしている人だったのですね。
 舞台は20世紀の初め。第二次世界大戦の直前です。イギリス人の少女・シャーロットは14歳。父親はインドの公使をしています。しつけに厳しい義母に、インドの寄宿学校に入れられたヒロインを待ち受けるものは…!?
 小公女の世界かなと思っていたら、おしんっぽく。さらに男装の麗人ならぬ女装の王子さま。ドレスを着て舞踏会♪のシンデレラエピソード。そして、スパイ小説&ヒロインの出生の秘密…と、萌えポイントてんこもりです。「トッカン」では感じませんでしたが、ストーリーテリングとキャラクター造形が上手ですね~。読者をぐいぐい引きずっていくお話なので、続きが出るのが楽しみです。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-19 20:37

クロク、ヌレ!

e0014175_12482559.jpg真梨幸子/講談社文庫/724円/2012.10.19.読了

 今、ノリにノッてる真梨幸子の新刊。カッコいい表紙ですね―。
 世界的流行作家で、過去に名作を残したジョー・コモリの死で、物語は始まります。
 と思ったら、話は変わって年老いた母と二人暮らしの女性へ。父親の兄は放浪の画家。彼が遺した作品を探し求める母の願いに振り回される娘。この兄とその弟である父親の関係がゴッホと弟・テオの関係を彷彿とさせます。認められないまま謎の死を遂げた兄(伯父)の絵に、目をつけた広告代理店の女性が絡んできて、人工的なブレイクを図るっていう生臭い話がてんこ盛りです!
 オビに「私が死んだ時、『代表作』と呼ばれるのはこの小説であってほしい」とあるように、ドロドロした女性の悪意、計算、狂気が詰まっています。先日読んだ「プライベート・フィクション」には、凝りすぎてよく理解できなかった話も入っていましたが、ストーリーとしてはとても追いやすかったです。
 女性の悪意を描くのが得意な女性作家、最近人気ですね。湊かなえとか沼田まほかるとか。このなかでは、個人的には真梨幸子がいちばんお気に入りです。「これが代表作」なんて言わず、どんどん書いてほしいものです。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-19 08:15

後悔と真実の色

e0014175_1004541.jpg貫井徳郎/幻冬舎文庫/876円/2012.10.17.読了

 なぜ上下巻に分けなかったのか…というくらいぶ厚い貫井徳郎の新刊です。
 「悲鳴が聞こえた」という通報で、出向いた警官が見つけたのはめった刺しの若い女性の死体。その指は切り取られていた…。
 同様の事件が連続して起こります。この事件を追う警視庁捜査一課の刑事・西條を中心に物語が展開し、そこに「悪を秘めた女性」をターゲットにし、ネットに犯行予告をして捜査を混乱に陥れる犯人「指蒐集家」視点の短い章が挟み込まれます。
 警察という機構の矛盾と一刑事の苦悩がじっくり書きこまれていて読みごたえがありました。主人公は実力は抜きんでているものの合理的なやり方がいきすぎているタイプ。不倫を告発され仕事を追われ、ホームレスに墜ち、愛した女性は殺され、さらに…と、人生のどん底にたたき落とされる主人公・西條の転落ぶりはすごかったです。転落した途端、手のひらを返したような部下の態度もリアルでしたね~。
 ミステリとしても一級品です。他のミステリの「意外な犯人」には驚かないことが多いのですが、この犯人は本当に意外で、そして納得がいきましたね。ぶ厚さにも納得がいく、充実した一冊です。
 それにしても、主人公の刑事の妻が印象的でした。それほど出番は多くないですが、華やかで才能がある女性に惹きつけられ、どうしても結婚したくて、拒否しているのを説得し、相手の条件を呑んで結婚したものの、結局相手も自分も不幸になり、挙句の果てはほかの女性と付き合う夫…まとめてみると主人公最低の男です(笑)。
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-17 21:52 | ミステリ

竜の涙

e0014175_1001568.jpg柴田よしき/祥伝社文庫/562円/2012.10.16.読了

 東京・丸の内のビルの小さな小料理屋を舞台にした作品。客の一人を主人公にした連作短編集っぽいカンジの構成になっています。同じ広告代理店に勤める3人の女性が別々に登場してきたのが、とっても興味深かったです。あたりまえですが、タイプの違う3人の女性を書きわけていて、お互い同士の人物像も描かれているのが、うまい!って感じました。働く女性、戦う女性を書かせたら、柴田よしき!ですよね。
 この本のもうひとつの魅力は、女主人が作るおばんざいです。解説にもありましたが、読んでいるとたまらなく食べたくなります。お惣菜っぽいところがいいんですよね~。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-16 07:48 | ミステリ

六機の特殊Ⅱ 蒼白の仮面

e0014175_1349159.jpg黒崎視音/徳間文庫/629円/2012.10.15.読了

 黒崎視音。久しぶりです。以前読んだ本の続編ですね。内容や設定、登場人物…忘れているけど、思いだせるでしょうか…。
 警察キャリアで、将来を約束されていた土岐悟は、同期の失態のしりぬぐいのため、警視庁特殊部隊の隊長に任ぜられた…というのが、前提。たぶん前作はひ弱なエリートと思われていた土岐が特殊部隊のメンバーに受け入れられる苦悩みたいな話だったような…?
 今回はすでにチームワークばっちりです。なので、事件のほうが主体で描かれています。ネットの自殺サイトに“蒼白の仮面”というハンドルネームで書き込みをする人物。彼は自殺を考えてる人たちを巧妙に操り、名門女子高立てこもり事件やタンクローリー強奪事件、連続爆破事件を起こさせる。一つ一つの事件を追う土岐率いる特殊部隊の活躍と、人間を操っているはずが思惑を外れいら立つ“蒼白の仮面”というカンジで物語が展開していきます。
 う~ん、蒼白の仮面っていうネーミングがちょっと…。私だったら絶対に使いませんね。巨大地下駐車場のアクションシーンは迫力ありました。ぜひ実写で見たいものです。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-15 21:21 | ミステリ

綱引いちゃった

e0014175_9583279.jpg大石直紀/小学館文庫/514円/2012.10.15.読了

 映画のノベライズ?タイトルからしてパクリっぽいけど?と、怪しみながら、購入。
 大分市の公務員の若い女性が、市の活性化のため綱引きチームを作るが…というお話。う~ん、イマイチです。ノベライズだから?映画はおもしろいの?
 なにかの目標に向かって、トラブルを解決しながら進み、その過程でチームワークも築き、ラストはカタルシス!ってタイプの話は、ほんとうに明暗が分かれますね。なんが違うのかはわかりませんが。

評価 可
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-15 00:43

和菓子のアン

e0014175_958559.jpg坂井 司/光文社文庫/667円/2012.10.14.読了

 高校卒業間近なのに、進路が決まっていない18歳・梅本杏子が主人公。彼女が見つけたのは、デパ地下の和菓子屋の販売員の仕事…という設定の連作ミステリです。
 和菓子の名前や慶弔の約束事を通して、日本文化を学べたり、デパ地下の裏話を知ったりできるお得な1冊。主人公も含め、登場人物のキャラも魅力的だし、ミステリとしては日常の謎系ですが、読後感のよい、買ってお得な1冊です。
 坂井司といえば、「引きこもり探偵シリーズ」が有名ですよね。あのシリーズは共依存っぽい感じがするのと、なーんとなくエリート意識っぽい匂いがして苦手なのですが、この本はとってもよかったです。この著者の中では一番です。
 主人公・アンちゃんと同僚立花さんの恋の行方も気になるところだし、続編が出るのが楽しみです♪

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-14 22:35 | ミステリ

テルマエ・ロマエ Ⅴ

e0014175_9573587.jpgヤマザキマリ/エンターブレイン/680円/2012.10.13.読了

 映画が大ヒットした「テルマエ・ロマエ」の新刊。買おうか、迷っていたら職場の人の貸してくれました。Tさん、ありがとうございます。
 いよいよルシウスにもロマンスが!お相手は古代ローマ研究者にして温泉芸者(?)というありえないヒロインです。ここに、平和な温泉街を地上げして一代歓楽街を作ろうとする勢力との戦いを絡め、さらにローマの皇帝の危機も絡み、ロマンスは盛り上がります!
 でも、5巻で作者が書きたかったのは、古代ローマの馬車で疾走するルシウスの姿だったようです…(笑)。すごいぞ、ルシウス。女性にも馬にももててるぞ、ルシウス。

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-13 18:44 | マンガ

伏 贋作・里見八犬伝

e0014175_957383.jpg桜庭一樹/文春文庫/667円/2012.10.13.読了

 うまい!すごい!と思うけれど、あんまり好きじゃない桜庭一樹。映画化することと、八犬伝がなつかしくて読んでみました。
 江戸の町を脅かすものは、人の姿をしているけれど、人ではない“伏”。犬の正体を隠し、人に立ち混じって生きている伏には賞金が掛けられている。兄を頼って田舎から出てきた少女・浜路は、たぐいまれなる猟師の才能の持ち主で、あっという間に伏を駆り立てる。そうしているうちに、信乃という名の伏と知り合いになり…。
 作中の現在。浜路と信乃が生きている時代と、作中に出てくる戯作者・冥土が探し当てた伏のルーツ、伏姫と八房の物語という二重構造をもったお話でした。伏姫と弟の話はおもいきりドロドロしていましたね~。
 浜路と信乃の話も、伏姫と弟の話も、余韻があると言えばいいけれど。なんだか中途半端なカンジで終わってしまいました。うーん、やっぱり苦手かも。
 それにしても、映画(アニメ)の絵柄はどうみてもジブリ?

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-13 18:17

まほろ駅前番外地

e0014175_1075474.jpg三浦しをん/文春文庫/505円/2012.10.11.読了

 直木賞受賞作「まほろ駅前多田便利軒」の続編っていうか、スピンオフです。
 なんでだか前作のことはほとんど覚えていないのです。世の中からはみ出した男性が2人で便利屋をやっているということくらいしか…。
 今回は連作短編集ってカンジでした。入院中の老婦人を見舞う仕事で、老婦人の若き日のロマンスを聞かされる“思い出の銀幕”がよかったです。自分をめぐる2人の男性を多田と行天という名前をつけちゃうおばあちゃんの茶目っ気がステキです。
 表紙はドラマ化されたキャストの瑛太と松田龍平。どっちが多田で、どっちが行天か見当つきません。瑛太=多田(まじめそう)、松田龍平=行天(いいかげんそう)?

評価 良
[PR]
# by susitaro522 | 2012-10-11 19:21