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さよならドビュッシー 前奏曲

さよならドビュッシー 前奏曲_e0014175_9302125.jpg中山七里/宝島社文庫/600円/2012.5.10.読了

 「このミステリがすごい大賞」受賞作「さよならドビュッシー」。おもしろかったですね。続編の「おやすみラフマニノフ」もよかったです。この本は「さよならドビュッシー」の前の話。「ドビュッシー」の冒頭で焼死した香月玄太郎が探偵役を務める連作短編集です。「ドビュッシー」で、初めのほうにしか登場しないのに、存在感が圧倒的ですよね。
 香月玄太郎は不動産の会社の社長。脳血管障害の後遺症で下半身に障害があり車いす生活です。性格は傲岸、不遜、毒舌。目的のためなら手段を選びません。精力的で、筋が通っています。信奉者も多いが、敵も山盛り…ってカンジ。
 1つ目の“要介護探偵の冒険”は、自分の所有する物件で死体が見つかった玄太郎が、物件の価値が下がることを防ぐため事件解決に乗り出す話。
 2つ目の“要介護探偵の生還”は、時系列から言えば一番最初です。脳血管障害で倒れ再起不能と信じられた玄太郎がリハビリをして復活する話。「ドビュッシー」にも登場するヘルパーのみち子さんとの出会いもここで読めます。もちろん事件もちゃんと起こります。
 そのほか“要介護探偵の快走”“要介護探偵と四つの署名”“要介護探偵の最後の挨拶”が収録されています。一本筋が通っている老人の毒舌を楽しむもよし。安楽椅子探偵ならぬ車いす探偵のアクティブな捜査&推理を楽しむもよし。「ドビュッシー」に登場人物がちらりと出てくるところににやりとするもよし。本好きを満足させる1冊です。

評価 良
by susitaro522 | 2012-05-10 23:55 | ミステリ
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